腰が痛いのに、なぜ股関節・膝・足首を見るの?|スポーツ選手の腰痛を「全身」から考える理由

「腰が痛いんです。」
そう言われたら、まず腰を見る。
これは当然です。
でも、スポーツ選手の場合、
腰だけを見て終わりにしていいのか?
僕は、ここをかなり大切にしています。
なぜなら、スポーツでは腰だけが動いているわけではないからです。
走る。
止まる。
切り返す。
ジャンプする。
着地する。
蹴る。
投げる。
こうした動作は、足から股関節、骨盤、背骨、そして上半身までが連動して行っています。
だからこそ、
「腰が痛いから腰を見る」だけではなく、「なぜ腰に負担が集まったのか?」を見る。
これがスポーツ選手の身体を考えるうえで重要だと考えています。
まず、研究では何が分かっている?
2024年に発表された、腰痛と股関節のバイオメカニクスについて54研究をまとめた系統的レビューがあります。
このレビューでは、
- 股関節の可動域
- 股関節の筋力
- 動作中の股関節の動き
- 筋活動
などについて調べています。
その結果、腰痛のある人では、
股関節の回旋可動域が低下していること
や、
股関節の外転・伸展筋力が低いこと
などが報告されていました。
また、歩行や立ち上がりなどの動作にも違いがみられています。
つまり、
「腰痛の人は腰だけが違う」
というわけではありません。
腰痛のある身体では、股関節を含めた身体の使い方にも違いが出ている。
これは、かなり重要なポイントです。
ただし、「股関節が硬い=腰痛の原因」ではありません
ここは誤解してほしくないところです。
2019年の系統的レビューでは、股関節の可動域と非特異的腰痛との関係を調べています。
その結果、
股関節の内旋可動域が低下している人で腰痛との関連が報告されたものの、
全体としてのエビデンスの質は非常に低い
とされています。
つまり、
「股関節が硬いから腰痛になった」
とまでは言えません。
ここが、研究を読むうえで非常に大切です。
「原因」ではなく「身体の特徴」として見る
僕が臨床で大切にしているのは、
「股関節が硬いから腰痛になった」
と決めつけることではありません。
例えば、
腰痛がある。
↓
股関節の動きが少ない。
↓
では、
その選手は実際の動作の中でどうしているのか?
を見ます。
例えば、サッカーなら
ボールを蹴るとき。
片脚で立つとき。
方向転換するとき。
ダッシュするとき。
減速するとき。
身体をひねるとき。
ここでは、
股関節だけではなく、骨盤や腰椎も一緒に動きます。
もし股関節が十分に動かない場合、
別の関節や身体の部位が、動きを補っている可能性があります。
ただし、
「股関節が硬いから腰が代わりに動く」
という単純な因果関係が、すべての選手に当てはまるわけではありません。
だからこそ、
実際の動作を見ることが重要になります。
では、なぜ「足首」まで見るのか?
ここが、さらに面白いところです。
例えば、
足首の背屈。
つまり、
足首を曲げて、すねを前に倒していく動き
です。
走る。
しゃがむ。
着地する。
方向転換する。
こうした動作では、足首の動きが関係します。
そして、足首だけが動くわけではありません。
足首の動きに合わせて、
膝。
股関節。
骨盤。
体幹。
が連動します。
だから、スポーツ選手の身体を見るとき、
「足首が硬いですね」
だけで終わるのではなく、
「その足首の状態で、実際にどう動いているのか?」
を見る必要があります。
研究でも「足首・股関節・体幹」をまとめて調べている
2021年に発表された前向き研究では、
ブラジル海軍の士官候補生545人を8か月間追跡し、
- 足関節背屈
- 股関節外転・外旋筋力
- 片脚スクワット
- 片脚ホップ
- プランク
- サイドプランク
- 過去の痛み
などを調べています。
その結果、
60秒のプランクを完遂できなかった人、
後方の柔軟性が低かった人、
過去12か月に2か所以上の身体部位に痛みがあった人では、
オーバーユースによる傷害の発生 odds が高くなっていました。
ただし、ここでも注意が必要です。
この研究は、
「足首が硬いから腰痛になった」
ということを証明したものではありません。
実際、研究では急性傷害については予測因子が確認されておらず、傷害の原因は多因子的だと考えられています。
だから、
一つの関節だけを見て「原因」と決めつけない。
これが大切です。
「膝」はどうなの?
膝も同じです。
例えば、
膝を痛めたことがある。
↓
片脚で踏ん張るのが怖い。
↓
無意識に身体の使い方が変わる。
↓
その状態で走る・止まる・切り返す。
↓
結果として腰への負担が変化する。
こうした可能性は考えられます。
しかし、
「膝のケガがある人は必ず腰痛になる」
ということではありません。
ここも研究上は、
身体の一部だけではなく、過去の傷害歴や動作、トレーニング量などを含めて考える必要がある
という程度に捉えるのが適切です。
実は「過去のケガ」がかなり重要
ここで、前回の記事にもつながってきます。
2020年に大学サッカー選手27名を調べた研究では、
腰痛だけでなく、
過去の下肢傷害歴と腰部多裂筋の機能
についても調査されています。
この研究では、腰痛のある選手で多裂筋の収縮時の厚さ変化が大きくなっていました。
研究者らは、腰椎を守るために身体をより強く固定するような「防御的な戦略」の可能性を考察しています。
つまり、
「腰が痛い」
という現在の症状だけを見るのではなく、
「その選手には、これまでどんなケガがあったのか?」
も重要な情報になります。
「腰痛の原因を探す」というより、「負担のかかり方」を見る
ここまで読んで、
「結局、どこが原因なの?」
と思うかもしれません。
でも、スポーツ選手の身体では、
必ずしも一つの原因に決められるとは限りません。
むしろ、
- 股関節の動き
- 足首の可動性
- 膝の状態
- 体幹機能
- 過去のケガ
- 疲労
- 練習量
- 競技特性
- 動作のクセ
などが重なって、
結果として腰に負担が集中する
と考えた方が現実に近いケースもあります。
2020年の大規模な系統的レビュー・メタ解析でも、スポーツ選手の腰痛には、過去の腰痛、高いトレーニング量、負荷が増える時期など、複数の要因が関係していることが示されています。
だから「腰だけ治療する」では足りないことがある
もちろん、腰そのものの評価は必要です。
痛みの場所。
痛みが出る動作。
可動域。
筋力。
神経症状の有無。
必要に応じて医療機関での画像検査。
こうした確認は大切です。
そのうえで、
「その腰に、なぜ負担が集まったのか?」
を見る。
ここからが、スポーツ選手の身体評価だと僕は考えています。
ATHBASE整体院で大切にしている「全身を見る」ということ
当院で身体を見るとき、
「腰痛だから腰を施術する」
だけでは終わりません。
例えば、
股関節
- 曲げる
- 伸ばす
- 内側・外側に回す
- 左右差
- 筋力
膝
- 片脚で支えられるか
- スクワット
- 着地
- 左右差
- 過去のケガ
足首
- 背屈
- しゃがみ込み
- 片脚支持
- 着地
体幹
- 姿勢
- 回旋
- 支える能力
- 疲労したときの変化
そして、
実際のスポーツ動作
ここまでつなげて考えます。
「身体が硬い」だけでは終わらせない
例えば、
「股関節が硬いですね。」
と言われたとします。
それだけなら、
「ストレッチしましょう。」
で終わります。
でも僕が知りたいのは、
その硬さが競技動作の中で本当に問題になっているのか?
です。
同じ「股関節が硬い」という状態でも、
痛みがない選手もいます。
高いパフォーマンスを出している選手もいます。
逆に、可動域が十分にあるのに腰を痛める選手もいます。
だから、
数字だけではなく、動作まで見る。
これが重要です。
そして「疲労」も忘れてはいけない
スポーツ選手の場合、
最初の10分はきれいに動ける。
でも、
30分経つと動きが変わる。
試合の後半になると身体が重くなる。
練習の最後だけ腰が痛い。
こういうケースがあります。
この場合、
「普段の身体の状態」だけを評価しても十分ではありません。
疲れてきたときに、どう動くのか。
ここも重要です。
スポーツ現場では、
「できる動作」と
「疲労してもできる動作」
は違います。
僕自身、理学療法士としてリハビリの現場と、スポーツトレーナーとしてスポーツ現場の両方を経験してきたからこそ、この違いは強く感じています。
「腰痛だから腰を見る」は間違いではない
ここは、誤解してほしくありません。
腰を見ることは当然大切です。
ただ、
腰だけを見ることが十分とは限らない。
ということです。
研究でも、
腰痛のある人には股関節の可動域や筋力、動作などに違いがみられることが報告されています。
一方で、
「股関節が硬いから腰痛になった」
「足首が硬いから腰痛になった」
といった単純な因果関係までは証明されていません。
だからこそ、
身体全体を評価しながら、その選手に本当に必要なところを見つける。
これが大切です。
こんな選手は、一度身体を見直してみてください
- 腰痛を何度も繰り返している
- 腰は治ったけど、スポーツをすると不安
- リハビリをしているのに痛みが残っている
- 過去に膝や足首のケガをしている
- 練習量が増えると腰が痛くなる
- 試合後半になると腰が痛くなる
- 「身体が硬いから」と言われている
- 体幹トレーニングをしているけど改善しない
こうした場合は、
「腰だけ」ではなく、一度身体全体を見てみる価値があります。
ATHBASE整体院が目指しているのは「痛みを取る」だけではありません
スポーツ選手にとって、
「痛くない」
はゴールではありません。
その先に、
思い切り走れる。
蹴れる。
跳べる。
切り返せる。
最後までプレーできる。
という身体が必要です。
だからATHBASE整体院では、
痛みのある場所だけではなく、
その選手が「どう動いているのか」まで見ること
を大切にしています。
「腰痛を繰り返しているけど、何を見直したらいいのか分からない」
「リハビリが終わったけど、競技復帰が不安」
「一度、身体全体を評価してほしい」
そんな選手・保護者の方は、お気軽にご相談ください。
本気でスポーツを続けたい選手の力になれるように、
痛みの場所だけではなく、その背景まで一緒に考えます。
ご予約・ご相談は公式LINEからお気軽にお問い合わせください。
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参考文献
- Pizol GZ, Miyamoto GC, Cabral CMN. Hip biomechanics in patients with low back pain, what do we know? A systematic review. BMC Musculoskeletal Disorders. 2024;25:415.
- Abady Avman M, Osmotherly PG, Snodgrass S, Rivett DA. Is there an association between hip range of motion and nonspecific low back pain? A systematic review. Musculoskeletal Science and Practice. 2019;42:38-51.
- Lopes TJA, Simic M, Chia L, et al. Trunk endurance, posterior chain flexibility, and previous history of musculoskeletal pain predict overuse low back and lower extremity injury: a prospective cohort study of 545 Navy Cadets. Journal of Science and Medicine in Sport. 2021;24(6):555-560.
- Nandlall N, Rivaz H, Rizk A, et al. The effect of low back pain and lower limb injury on lumbar multifidus muscle morphology and function in university soccer players. BMC Musculoskeletal Disorders. 2020;21:96.
- Thornton JS, et al. Treating low back pain in athletes: a systematic review with meta-analysis. British Journal of Sports Medicine. 2021.
- A systematic review and meta-analysis of prevalence and risk factors for back pain in sport. British Journal of Sports Medicine. 2020.



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