腰痛の選手は「多裂筋が弱い」のか?|サッカー選手の研究から考える腰痛と体幹の使い方

「腰痛なら体幹を鍛えたほうがいい」
「腰の筋肉が弱いから痛くなる」
スポーツをしている人なら、一度は聞いたことがあるかもしれません。
では実際に、腰痛のある選手は、本当に腰の筋肉が弱いのでしょうか?
今回は、スポーツ選手を対象にした研究から考えてみます。
まず、多裂筋って何?
今回注目するのは、多裂筋(たれつきん)という筋肉です。
背骨のすぐ近くにある、比較的小さな筋肉で、大きな力を出す筋肉というより、腰椎の動きを細かくコントロールしたり、脊柱を安定させたりする役割を持っています。
いわゆるインナーマッスルといわれるもので、背骨を支え、姿勢を安定させるために働いています。
2020年、大学サッカー選手を調べた研究
2020年に発表された研究では、大学サッカー選手27名を対象に、
・腰痛の有無
・過去の下肢傷害歴
・多裂筋の大きさ
・多裂筋が収縮したときの変化
などを超音波で調べています。
対象となった選手のうち、8名が過去3か月以内に腰痛を経験しており、13名には過去12か月以内の下肢傷害歴がありました。
そして、興味深い結果が出ています。
腰痛選手は「多裂筋が小さい」とは限らなかった
腰痛のある選手とない選手を比較すると、多裂筋の断面積そのものには有意な差がありませんでした。
つまり、
「腰痛がある」
↓
「腰部の筋力が弱い」
↓
「だから痛い」
という単純な関係ではなかったのです。
一方で、腰痛のある選手では、
多裂筋が収縮したときの厚さの変化が大きいという特徴が認められました。
研究者らは、この結果について、腰椎を安定させるために、身体をより強く「固める」ような反応が起きている可能性を考察しています。
つまり、「働いていない」というより、
「働き方が変わっている」可能性があるということです。
ここが、かなり大事
筋肉を見るとき、「強いか、弱いか」だけで考えてしまいがちです。
でも、身体はそんなに単純ではありません。
筋肉が小さいから問題なのか。
筋肉がうまく働いていないのか。
必要以上に力が入っているのか。
左右で使い方が違うのか。
動作の中で適切なタイミングで働いているのか。
同じ「筋肉の問題」に見えても、中身は全く違います。
だから、「腰痛だから体幹を鍛えればいい」だけでは不十分なことがあります。
そして、2026年にもっと大きな研究が出ました
ここで、さらに興味深い研究があります。
2026年に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、
18研究、1,142人のアスリート
を対象に、腰痛のある選手とない選手の多裂筋を比較しています。
その結果、多裂筋の断面積や厚さなどについて、腰痛のあるアスリートとないアスリートで、明確な有意差は認められませんでした。
つまり、「腰痛=体幹周りの筋力が弱い」という説明は、現在の研究全体を見ると簡単には言えないのです。
「腰痛」という結果だけを見ない
スポーツ選手の身体を見ていると、腰痛が出たからといって、必ずしも「腰だけ」に問題があるとは限りません。
例えば、
股関節がうまく動かない。
足首が硬い。
片脚で身体を支えにくい。
骨盤の動きが少ない。
疲れてくると姿勢が崩れる。
以前の足首や膝のケガをかばっている。
練習量が急に増えた。
こうしたことが重なって、結果として腰に負担が集中していることもあります。
だから僕は、「腰が痛いから腰を見る」だけではなく、「なぜ腰に負担が集まったのか」を考えることが大切だと思っています。
実際、サッカー選手の研究でも「腰以外」が関係している
2016年に発表されたエリートサッカー選手25名の研究では、
腰痛のある選手において多裂筋のサイズや収縮、さらに股関節の内転・外転筋力の左右差などが調べられています。
腰痛のある選手では、多裂筋のサイズや筋活動だけでなく、股関節周囲の筋力にも特徴がみられました。
研究者らは、こうした修正可能な要素を把握することが、より対象を絞ったリハビリテーションにつながる可能性を示しています。
つまり、腰痛を「腰の筋肉だけの問題」として終わらせないという考え方には、研究からもヒントがあります。
痛い場所と、診る場所は同じとは限らない
これはスポーツ障害を見るうえで、僕がかなり大切にしている考え方です。
腰が痛い。
だから腰を見る。
もちろん必要です。
でも、「なぜ腰が痛くなったのか?」まで考えるなら、腰から離れた場所も見る必要があります。
股関節
足首
足部
膝
体幹
そして、実際のスポーツ動作。身体は一つにつながっています。
「腰痛を繰り返している」なら、一度見直してみてください
もし、
「一度治ったのにまた腰が痛くなる」
「練習量が増えると腰が痛い」
「病院では問題ないと言われたけど、動くと不安」
「体幹トレーニングをしているのに改善しない」
そんな状態なら、単純に「もっと体幹を鍛える」だけではなく、身体の使い方そのものを一度確認してみるという選択肢があります。
「また腰を痛めたくない」という選手へ
腰痛は、「腰が悪いから」だけで説明できないことがあります。
そして、「体幹筋が弱いから」だけでも説明できません。
今の研究を見ても、筋肉の大きさだけで腰痛を判断することはできないというのが、より正確な答えです。
「何度も同じ場所を痛める」
「リハビリは終わったけど、競技復帰が不安」
そんな選手は、一度身体を診せてください。
ATHBASE整体院では、痛い場所だけを見るのではなく、その痛みが起きた背景まで考えることを大切にしています。
「こんなことで相談していいのかな?」
くらいでも大丈夫です。
本気でスポーツを続けたい選手の力になれるように、身体を一緒に整理していきます。
ご予約・ご相談は公式LINEからお気軽にお問い合わせください。
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参考文献
- Nandlall N, Rivaz H, Rizk A, Frenette S, Boily M, Fortin M. The effect of low back pain and lower limb injury on lumbar multifidus muscle morphology and function in university soccer players. BMC Musculoskeletal Disorders. 2020;21:96.
- Hides JA, Oostenbroek T, Franettovich Smith MM, Mendis MD. The effect of low back pain on trunk muscle size/function and hip strength in elite football (soccer) players. Journal of Sports Sciences. 2016;34(24):2303-2311.
- Wong WK, Fu ACL, Tsang SMH. Morphological and Compositional Features of Lumbar Multifidus in Athletes with Chronic Non-specific Low Back Pain: A Systematic Review and Meta-Analysis. International Journal of Sports Physical Therapy. 2026;21(6):473-492.


